家賃が200万もするのにスタバが儲かる理由
皆さんこんにちは
飲食店コンサルティング
株式会社スリーウェルマネジメント代表コンサルタントの三ツ井創太郎です。
先日、ITメディア様のニュースにて「
この記事の要点をまとめますと
①「フラペチーノ」
②ドリンク全体の売上構成比を75%近くにまで高め、
という事になります。この戦略からは
『ツイテル商品(低原価&高売上構成比)の徹底的な磨き込み(
という原理原則が重要である事を改めて認識させられます。
前回記事は下記よりどうぞ!
失敗する評価制度の共通点
飲食店経営者の皆様のご参考になれば幸いです。
本日も最後までお読み頂きありがとうございました。
【ヤフーニュースの記事の全文は下記より】
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このお店の前を通らない日はないと言っても過言ではなく、今や日本全国に約1300店舗を展開をしているスターバックスコーヒー。皆さんは日頃から駅前などの一等地に展開しているスタバを見て「なぜ1杯300~400円のコーヒー店がこんな家賃の高い場所に出店できるんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?
今回はそんな皆さんの疑問に応えていきたいと思います。スターバックスコーヒージャパンは2015年に上場廃止となっていますので、それ以前の決算資料などからスタバの強さを見ていきます。
【飲食店を分析するスキーム】
まず飲食店の経営分析を行う上では「FL比率」という指標が重要になります。Fは「Food cost」の頭文字で売上原価(食材費)という意味、Lは「Labor cost」の頭文字で人件費を意味します。つまりFL比率とは原価率+人件費率の合計となります。
一般的に飲食店では売上高に対してFL比率で60%以内、さらに家賃も含めたFLRコスト比率(Rは「Rent」で賃料)で70%以内に収めるというのが重要とされています。そしてFL比率を55%以内に抑えられている業態はかなり優れたビジネスモデルといえます。もちろんこれらの指標は業態や出店場所などによって変わりますので、あくまでも一つの経営指標として捉えてください。
【スタバの決算書はどうなっている?】
それでは、スターバックスコーヒージャパンの14年3月期の決算(非連結)を確認してみると、F=原価率は28.3%、L=人件費率は26.7%となっています。つまりFL比率でちょうど55%、まさに飲食店のお手本のような業態です。先ほど説明したようにFLR比率で70%に収めるのが一般的な飲食店の経営指標ですので、FL比率が55%である同社は理論上では賃料に15%ものコストをかけられます。
では同社の1店舗当りの売り上げはどのくらいあるのでしょうか? 14年3月期の売上高は1256億円となっています。この段階での店舗数が1034店舗ですから、単純計算でも1店舗平均で年間1億2000万円、月商1000万円の売り上げがあるということです。 しかし、この1034店舗には店舗での売り上げが全て計上されないライセンス店舗が含まれていますので、実際にはもっと1店舗当りの売り上げが高いということになります。
【賃料が高くても利益が出る理由】
私が行った調査では、好立地の店舗で1坪当りの月商は40万円を超えています。つまり、50坪程度のお店では月商2000万円を売り上げることになります。続いて賃料に関してですが、これは地域や物件の階数などによって大きく変わります。首都圏の店舗賃料相場を掲載している「店舗相場TOWN」によると、東京都内における1階の店舗賃料相場は1カ月、1坪当り2万6000円程度です。神奈川県だと1万7000円程度、千葉県だと1万3000円程度となっています。当然ですがさらに細かいエリアや階数、駅前、郊外などの諸条件によって賃料相場は大きく変わります。賃料が高いイメージが定着している銀座がある東京都中央区だと、店舗賃料相場は平均でも4万円程度、最も高い場所では20万円を超えます。
例えば好立地で坪4万円の賃料の場所にスタバを出店した場合、50坪で賃料が月200万円であったとしても、月商が2000万円(50坪×1坪月商40万円)であればR比率=賃料比率は10%となります。先ほど説明したように同社のFL比率は優良店指標の55%でしたので、賃料の10%を足してもFRL比率は65%となり、優秀な利益を出すことが可能となります。
【原価率を抑えられる理由】
実際に先ほどの決算資料を確認すると、全店舗の合計賃料比率は10.9%となっています。こうして実際の経営数値を見ると同社の優れた経営状況が分かるでしょう。その中でもとりわけ優れているのがFL比率です。特に1杯数百円にもかかわらず原価率を28%程度に抑えられているのはなぜでしょうか? 理由は大きく3つあります。
(1): 大量仕入れによる原価抑制
当然ながらコーヒー豆などの原材料は大量に仕入れることでコストを抑えられます。実際に同社の決算資料を見ていくと、大量仕入れの状況が読み取れます。ここでは「在庫回転日数」という指標を見ていきます。これは会社として保管している原材料などが何日分の営業分かを算出した指標になります。実際に同社の在庫回転日数を計算すると約23日となります。在庫回転日数に関しては、業態や事業規模によっても変わるため、一概に適正値などは言えませんが、一般的な飲食店ではどんなに長くても10日以内となります。
こうして考えるとこの23日というのはかなり長い数値です。つまり、「大量に在庫をストックしている」=「大量仕入れを行っている」ということです。仮に個人店の飲食店が23日分もの在庫をストックしていたら資金繰りなどでかなり苦労します。こうした大量仕入れは大手チェーンの資本力があってこそできることでもあります。
(2): 高付加価値商品の販売
皆さんもスタバで一度はシーズン商品を飲んだことがあると思います。その代表が「フラペチーノ」です。今ではすっかりおなじみとなったこのフラペチーノですが、他のコーヒーチェーンでは販売されていません。なぜかというとこのフラペチーノという商品名は、「フラッペ」と「カプチーノ」から生まれた造語であり、スタバの登録商標となっているからです。つまりフラペチーノはスタバでしか飲むことができません(もちろん類似品はあります)。
そしてこのフラペチーノの価格を見てみると、現在販売されている「加賀 棒ほうじ茶 フラペチーノ」の値段は620円(税抜、以下同)です。ドリップコーヒーがショートサイズで280円ですので、スタバの中でも高単価商材と言えます。
スタバでは12年夏より季節限定フラペチーノを販売しており、現在においても革新的な季節限定のフラペチーノを販売する事を重要戦略として位置付けています。こうした付加価値が高い、他店にはまねできない高単価商品を次々に投入できることも、客単価アップや原価率抑制、粗利額アップに効果を発揮しています。
(3): ドリンク売上比率の高さ
スターバックスコーヒージャパンとの比較として、ドトールなどのチェーンを展開するドトール日レスホールディングスの原価率を確認すると41.1%となっています(18年2月期)。これにはドトール以外の業態も含まれているので、ドトール業態単体の原価率を公表していた08年の決算資料を確認すると、ドトール業態の原価率は49.3%ですが、スタバの原価率は28.3%です。では、なぜ同じコーヒーチェーンでありながら、これだけ原価率に差があるのか?
これはスタバに限ったことではありませんが、一般的なコーヒー店、カフェ店においてはドリンクの売上比率が店舗の原価率抑制には重要となります。通常はフードメニューや、物販メニューはドリンクメニューに比べ原価率が高くなります。実際にスタバのアイテム別の売上構成比を確認してみましょう。
【他のカフェやレストランチェーンより何が優れているのか?】
売上構成比を確認してみると、ビバレッジ=ドリンクの売上構成比が74%となっています。これは他のカフェやレストランチェーンと比べ圧倒的に高くなっています。この理由はフラペチーノなどのシーズン限定ドリンク商品の重点販売施策などに起因しています。フードメニューよりも原価率が低いドリンクメニューの売上構成比を高める(もちろんそうではない商品もありますが)ことで、店舗全体の原価率抑制を実現しているのです。
このように、資本力や商品開発力を発揮することで、他のカフェやレストランチェーンではなし得ないFL比率を実現し、高賃料でも出店できるビジネスモデルを構築していることが他社にはない強みであると言えます。
執筆:三ツ井創太郎
出典:ITmedia ビジネスオンライン