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飲食店出店に失敗しない為の商圏分析のやり方 | 飲食店コンサルティングのスリーウェルマネジメント

【ご相談内容】繁華街でイタリアンレストランを3展開するI社長「良い物件が出たのでチャレンジしたい」

飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント代表コンサルタントの三ツ井創太郎です。

先日、当社の無料経営相談窓口に1通のメールが届きました。ご相談の内容は

「繁華街で客単価5,500円のイタリアンレストラン等を3店舗展開しているIと申します。長引いたコロナ禍で既存店の売上が低迷してしまいました。今年からコロナ借入の返済もスタートしているので、出店で会社の利益を増やしておきたいと思っております。ちょうど居抜きで良い物件が出たので、チャレンジしたいと思っています」

早速ZOOMにてI社長とお話をさせて頂きました。最初に私からI社長にお伺いをしたのは今までの出店基準についてです。

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三ツ井「I社長、3店舗の展開をされていますが、今までの物件選定に関して出店基準との照合や商圏分析等はされてきましたか?」


I社長「出店候補物件の商圏分析ですか?!いや、そういう事は今までは一切していないです。今までは全て私の肌勘に頼った出店をしています」


確かに「経営者の肌勘」というのは立地選定を行う上では重要な要素だと私は思います。

既に数店舗の店舗を展開されてきた飲食店経営者の方であれば、土地勘のある場所であれば、自身のお店がフィットする立地かどうかは肌勘で判断できるようになっています私は会社に資金が潤沢にあって、調子が良いときは社長の肌勘に頼るような勢いのある出店攻勢は有効だと思っています。

しかし、I社長の内情や資金繰り状況をお伺いする限りでは、今は社長の肌勘だけに頼るようないわゆる「ギャンブル出店」ができるような状況ではありません。ましてや今回の候補物件は土地勘の無い場所です。

そこでまず私が提案したのは、既存店3店舗の商圏分析です。ここで飲食店の商圏分析を行う際に活用するデータについてお話をさせて頂きます。

飲食店の商圏分析①乗降客数

飲食店の商圏分析①乗降客数

乗降客数とは駅において一日に乗降した人の数です。

駅前繁華街への出店を検討する際には重要な指標となります。例をあげるとすると、皆さんご存知の牛丼の吉野家であれば出店基準の一つに「乗降客数5万人以上」、松屋であれば「乗降客数2万人以上」などの立地選定基準を持っています。

必要乗降客数は業態やブランドによって異なりますが、大手企業は各社自社なりの基準を持っています。

飲食店の商圏分析②夜間人口

飲食店の商圏分析②夜間人口

夜間人口とは、その地域に常住する人口です。

郊外立地においては、夜間人口の数は出店可否判断において特に重要な要素となります。なお郊外立地における「商圏の範囲」については業態や立地特性によりますが、一般的には車で8分~15分以内を自店商圏として設定します。ただ「踏切」や「週末に大渋滞する橋」といった分断要因があると、たとえお店からの距離が近いエリアであっても有効商圏とならない場合があるので注意が必要です。
 

飲食店の商圏分析③昼間人口

飲食店の商圏分析③昼間人口

昼間人口とはその地域に通勤、通学する人の数であり、昼間の買い物客などは含まれません。

繁華街等の出店立地選定においては重要な指標ですが、テレワークの増加等により実際の昼間人口数が大幅に減少している地域があるので、データだけで判断するのは危険です。こうしたテレワークの増加に伴い、最近では繁華街出店においても昼間人口だけでは無く、一定の夜間人口ボリュームもあるエリアが好まれる傾向があります。

例えば繁華街の外れで後ろに住宅街を抱える場所であれば、駅前一等地よりは賃料が安く、夜間人口需要により平日のビジネス利用だけでは無く、週末のファミリー客等も狙えるという特性があります。今後はこういった立地への出店ニーズが高まっていく事が予想されます。

飲食店の商圏分析④昼夜間人口比率

飲食店の商圏分析④昼夜間人口比率

昼間人口とは、夜間人口を100とした場合の昼間人口の指数です。 昼夜間人口比率が100を超える場合はビジネス型商圏(通学も含む)、逆に100を下回る場合はベッドタウン型商圏と定義しています。


 【昼夜間人口比率=昼間人口 ÷ 夜間人口 × 100】


例えば東京駅を例に例えて説明すると、東京駅の2km圏内の昼夜間人口比率は11567%となり圧倒的なビジネス型商圏である事が分かります。一方で同じ東京都内でも高級住宅街として有名な田園調布の昼夜間人口比率は74%であり、ベットタウン型商圏である事が分かります。

飲食店の商圏分析⑤全産業事業所数/全産業従業者総数

全産業事業所数はそのエリアにおける法人の数を表しています。

一方で全産業従業者数はそのエリアで働いている人の数です。さらに全産業従業者数を全産業事業所数で割ると1社当り従業者数を算出する事ができます。1社当り従業者数が多いという事は、大企業が多いエリアという事になります。

例えば商店街のようなエリアは個人事業主の事業所数は多いのですが、1社当り従業者数が少ないという傾向になります。コロナ前は1社当り従業者数が多いエリアは大型の忘年会需要が狙える立地として人気がありましたが、コロナ禍をきっかけに大手企業の大人数宴需要が減少している点には注意が必要です。

飲食店の商圏分析⑥競合店舗数/1競合店舗数当り昼間人口/1競合店舗数当り夜間人口

競合店舗数とは文字通り、自店と競合になる飲食店の数になります。

1競合店舗数当り昼間人口とは「昼間人口÷競合店舗数」で表され、数が大きいほどその業態のビジネス、通学マーケットにおける競合性が低い=マーケットボリュームがあると言えます。展開する業態によって一概には言えませんが、1競合店舗数当り昼間人口は主に平日売上に影響し、1競合店舗数当り夜間人口は週末売上に影響します。


こうした様々な商圏指標や既存店の席数、坪数等を多面的に分析した上で既存店5店舗の商圏特性をルール化していきます。

さらにそのルール化した数値と、今回の出店候補地を見比べていきました。分析の結果、I社長が検討している物件は既存店のどの物件よりも夜間人口、昼間人口が多く、さらには競合店も少ない事が分かりました。

競合店に関しては、当社の調査専門コンサルタントが実際にお店に来店して、メニューや価格設定、QSCレベル、繁盛具合等の現地調査を行いました(競合店調査の方法については事項で解説します)。こうしたデータから導き出された出店候補地の予測売上は損益分岐点売上高を大きく超えており、目標営業利益を達成できる可能性が高い事から、我々からI社長にはこの物件であれば大丈夫だろうという事をお伝えさせて頂きました。

ただ一方で、出店候補エリアの商圏特性やこれからの人材不足等を考慮すると既存の客単価5,500円のイタリアンレストランよりは、もう少しカジュアルにし、少し「バル要素」を付加した方が良いのではという提案もさせて頂きました。そこで次のフェーズとして、この立地に適した業態&メニュー開発のお手伝いをさせて頂く事になりました。長引いたコロナ禍で財務が傷んだ状況においては、1つの出店の失敗は会社にとっては命とりとなります。皆様もアフターコロナの出店立地選定においては、しっかりと商圏分析を行う事をおすすめします。
 

本ブログが少しでも飲食店経営者の皆様のご参考になれば幸いです。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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