アフターコロナで飲食出店/開業を成功させる為の3原則 | 飲食店コンサルティングのスリーウェルマネジメント
飲食店コンサルタントの三ツ井です。
今回のテーマは「アフターコロナで飲食出店を成功させる為の3原則」です。
先日は居酒屋業態を展開するA社長より焼肉業態へのリニューアルの無料経営相談を頂きました。
A社長は繁華街にて2店舗の居酒屋を経営しておられますが、コロナ禍に伴う法人宴会需要減少などを見据え、焼肉業態へのリニューアルを検討されておられました。
飲食店の開業やリニューアルを成功させる為の3原則
当然ながら、ただ単に「焼肉店がやりたい!」という想いだけでは繁盛店をつくる事はできません。特にアフターコロナにおける出店の失敗は財務的ダメージも大きい為、より慎重に出店/リニューアルを検討していく必要があります。ここで当社で業態開発やリニューアルのご相談を頂いた際に大切にしている「3原則」についてお話をさせて頂きます。
<飲食店がアフターコロナで出店/業態開発を成功させる為の3原則>
①トップの想い=自社がやりたい事
やはり「トップ=経営者の想い」は飲食店経営を行う上ではとても重要です。さらにはその「やりたい事」が「自社の経営理念」とどうリンクしているかも考える必要があります。コロナ禍直後においては緊急事態宣言に伴う営業自粛への対応の為、テイクアウトやデリバリーといった業態に「いち早くチャレンジせざるを得ない状況」もあったかと思いますが、今後は経営理念や中長期的な視点から「自社が取り組むべき業態」を考えていく事が重要です。
②内部環境=自社でできる事
経営者がどんなにやりたい事であっても「自社にできない業態」は実現できません。特にこれからの超人材不足時代を考えると「その業態/店舗を担う人が採用できるか?」という事も予め考えておく必要があります。
③外部環境=市場が求めている事
たとえ①と②が達成されても、そもそも市場がその業態/店舗を求めていなければ事業としては成立しません。そう言った意味でも出店候補地の市場/商圏分析は重要です。
A社長には、本格的に業態リニューアルを行う前に「出店可否判断」をする事をお勧めさせて頂きました。
飲食店の出店可否判断を行う上での3つのポイント
私達が飲食店の出店可否判断を行う上で重要視しているのは下記の3点です。
①マーケットボリューム分析
具体的には昼間人口(働く人+学生)と夜間人口(住んでいる人)や、最寄り駅の乗降客数、物件条件(坪数、席数)、業態によっては店前通行量などを詳しく調べていきます。
アフターコロナの出店において1点注意が必要なのが昼間人口です。昼間人口は主に国勢調査のデータ等を活用しますが、国勢調査は5年に一回しか行われておらずコロナ禍の2020年10月に実施された就業、通学関連調査データの公表日は今年の7月22日です。つまり現状で使用できる昼間人口データはコロナ禍前のデータとなります。
なお現在の繁華街周辺の出社率データを分析すると、コロナ禍に伴うテレワークの浸透等によりエリアによっては企業の出社率は80%程度となっています。私はこうしたアフターコロナにおける出社率を「有効昼間人口比率」としています。
つまり直近の繁華街への出店/リニューアルにおいては
「昼間人口×有効昼間人口比率80%」
というシミュレーションも必要になります。
なお、この有効昼間人口比率ですがエリアや業態や利用動機によって変わります。当社の調査における6月末時点の繁華街の有効昼間人口比率は概ね下記の通りです。
小人数利用居酒屋・・・有効昼間人口比率80%
焼肉店・・・有効昼間人口比率100%
大規模宴会居酒屋・・・有効昼間人口比率60%
繁華街ラーメン店・・・有効昼間人口比率90%
この有効昼間人口比率は今後100%に向けて上昇していく事が予想されています。
②競合店分析
基本的に店舗の集客力は
「マーケットボリューム×自店舗のシェア率」
で算出する事ができます。
このシェア率を高める為には
・競合店の数
・競合店と比べた自店舗の差別化要素
この2点が重要になります。
そこで当社では周辺競合店については、実際に我々コンサルタントが店舗に訪問した上で「差別化要素調査」を行います。この差別化要素調査については、またの別の機会にコンサル日記で詳しくお話をさせて頂きます。
③モデル店分析
「競合店」とは同一商圏で競合となり得るお店、一方で「モデル店」とは同一業態でモデルとなりえるお店であり、調査対象エリアは全国になります。ここについては当社が長年にわたって蓄積してきた飲食店調査データや、全国飲食店の最新の繁盛店等から調査店舗をピックアップしていきます。
④出店損益シミュレーション
そしてこれら調査で得られた情報を整理し、出店可否判断を行っていきます
今回のA社長のケース、調査結果を踏まえた私共の結論は以下の通りでした。
【出店可否判断】
①店舗近隣にはかなり強い競合焼肉店(差別化スコア80ポイント以上)が多数あり、競合店の売上シェア率も高い。こうした焼肉店に対して後発の自社が差別化を確立するのは容易ではない。
②対象エリアのオフィスはまだまだ出社率が低く、有効昼間人口比率は80%程度と予想される。
③焼肉店リニューアルに伴う設備投資や返済を踏まえた上でROI(投資収益率)シミュレーションを行うと現状の居酒屋業態からキャッシュフローベースで大きな改善は見込めない
この結果を正直にA社長にお話をさせて頂きました。
我々は「新しい業態をやりたい」というご相談を頂いても、今回のA社長のケースのように、客観的な調査結果を踏まえて「その業態へのリニューアルは難しいです!」と率直にお伝えさせて頂く事も多々あります。
アフターコロナにおいては、顧客ニーズの変化や人材不足、原価高騰などリスク要因も多い為、しっかりとしたデータに基づいた出店判断の重要性が増してきています。
本ブログが少しでも飲食店経営者の皆様のご参考になれば幸いです。
本日も最後までお読み頂きありがとうございました。