飲食店の社員独立制度(のれん分け制度)の作り方と成功事例
飲食店の社員独立制度(のれん分け制度)の作り方と成功事例
皆さんこんにちは飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント代表の三ツ井です。
先日は居酒屋業態を展開しているA社長のご支援でした。
A社長とはもう5年位にお付き合いになります。その時々のA社長のお悩みによってコンサルティングの内容は変わりますが、最近のご支援テーマは「社員独立制度(のれん分け制度)」の構築です。
飲食店の社員独立制度(のれん分け)の作り方 | 飲食店コンサルティングのスリーウェルマネジメント
A社長のお店は地域一番の繁盛店として長年営業をしてきました。
繁華街型の居酒屋店という事で、コロナ禍ではかなりの影響を受けましたが、まん延防止が解除されてからは常連のお客様も戻り、アフターコロナに向けて「いよいよこれから攻めていこう!」という所である事態が起きました。
創業から苦楽を共にしてきたスタッフからA社長に「会社を辞めたい」という相談がありました。
退職理由は「長引くコロナ禍で自分の将来について改めて考えなおしたい」といった内容でした。
こうした中でA社長は社員にとって「夢(未来)が見える会社にしていきたい」と強く思われ、キャリアビジョンの見直しと社員独立制度の構築を決意されました。A社長に限らずアフターコロナにおける人材獲得がますます難しくなってきている中で、自社の新たな成長戦略、採用戦略、ES向上戦略として社員独立制度を検討される飲食店経営様からのご相談が増えてきています。
私は今まで数多くの社員独立制度を構築してきましたが、社員独立制度を成功させるためには3つのポイントが重要となります。
飲食店が社員独立制度を成功させるための3つのポイント
①キャリアビジョンと独立支援制度
会社としてスタッフの将来を考えた上での成長プラン=キャリアビジョンの中に社員独立制度を組み込む事です。さらにはキャリアビジョンと連動した階層別研修の中に独立資格取得研修等を整備していく事が重要です。
②理念浸透
いくら店舗運営スキルが高い社員といえども、企業理念やブランド理念に共感できていないスタッフにのれん分けをしてはいけません。①の独立資格取得研修とも連動してきますが、階層別研修の中で理念浸透に関してもしっかりと教育をしていく事が重要です。
③契約形態
社員独立制度を検討する社長様が一番悩むのが契約形態です。社員独立制度における独立者との契約形態は大きく分けて「フランチャイズ契約」と「業務委託契約」に分かれます。
ここで飲食店の社員独立制度における「フランチャイズ契約」と「業務委託契約」の違いに関して、少しお話をさせて頂きます。
飲食店の社員独立制度における「フランチャイズ契約書」と「業務委託契約書」の違い
上記表は飲食店の社員独立制度(のれん分け制度)における、フランチャイズ契約と業務委託契約の概要を一覧にした表になります。もちろんこちらの内容は事業規模、業態、事業戦略などによって大きく変わりますので、あくまで目安として考えて頂ければ幸いです。
(1)従業員の雇用
こちらに関してはフランチャイズ方式、業務委託方式のいずれも独立者が従業員を直接雇用するケースが多いです。業務委託方式において、店長(独立者)以外は以前と同じ本部雇用というケースもみかけますが、こちらは運営実態によっては労働基準監督署から偽装請負と指摘される事もありますので注意が必要です。
(2)独立までの期間
フランチャイズ方式の社員独立制度では概ね3年~5年が一般的です。一方で業務委託方式では1年~2年と短くなっています。フランチャイズ方式は独立者が初期投資(又は店舗買取)をするケースが多く、資金調達における信用力や経営力をつけるという意味でも独立までの期間が業務委託形式に比べて長くなる傾向があります。
(3)独立資格認定制度
こちらはフランチャイズ、業務委託どちらの方式においても重要です。資格認定においては店舗運営スキルのみならず、経営者としての資質や企業理念&ブランド理念の浸透度合いも加味します。最終的には役員等の面談を経て「のれん分けにふさわしい人財か」という事を総合的に判断していく流れになります。
(4)食材仕入れ
食材の仕入れに関して、一部生鮮食材を除いてはスケールメリット等を加味して本部が指定する業者さんから仕入れるケースががほとんどです。一方で業者さんとの売買契約については独立者と業者さんが直接代金決済するケースと、本部が間に入り代金決済を建て替えるケースがあります。業務委託形式においては「自己資本無しで独立できる」という点を魅力として打ち出している企業も多く、こうした企業においては、独立者の資金繰りを考慮して本部が間に入り代金決済を建て替えるケースも少なくありません。
(5)賃貸借契約
フランチャイズ方式では独立者が全ての経営権を持つため、賃貸借契約も独立者となるケースがほとんどです。一方で既存店を活用する業務委託方式においては、本部と既存店の大家さんとの間で締結されている賃貸借契約において、ほとんどの場合は転貸借(又貸し)を禁じられている為、賃貸借契約を本部のままとするケースが多いのが実状です(大家さんと交渉して転貸借を認めるもらう場合もある)。新店舗の業務委託方式においても、物件取得費の独立者負担を軽減する為に本部の賃貸借契約とする場合もあります。
(6)物件初期投資
新店舗にてフランチャイズ方式で独立する場合は、独立者が借入を行い物件の初期投資を行うケースがほとんどです。一方で業務委託方式におていは、既存店を貸し出す、または本部が初期投資を行い独立者の開業時の資金負担を極力減らすケースが多いのが実状です。一つの例ですが、モスバーガーを展開するモスフードサービスの社員独立制度では、店舗取得に関して「一括買取型」「分割買取型」「レンタル型」といったような様々なサポート制度が用意されています。
(7)資金調達支援
前項で述べたように業務委託方式では独立者の初期投資をできる抑えるため、特に資金調達の支援はしないケースが多いです。一方でフランチャイズ方式においては、初期投資の調達に関して債務保証等を行っている本部もあります。有名な企業の例ですと、カレーハウスCoCo壱番屋が行っている社員独立制度「ブルームシステム」では、のれん分け社員に対する債務保証制度が整備されています。
(8)売上の帰属
フランチャイズ方式においては、独立者は完全に「独立した経営者」として店舗経営を行う為、売上金も全て独立者に帰属します。一方で業務委託方式で本部が仕入れ代金、賃料等を支払うケースにおいては売上金は本部の帰属となり、経費を際し引いた中から業務委託費を独立者に支払うケースが一般的です。
(9)加盟金
フランチャイズ方式の社員独立制度では、一般的なFCより加盟金を減額するケースがほとんどです。金額に関しては0円から100万円に設定するケースが多いです。業務委託方式では加盟金は徴収しません。
(10)ロイヤリティ
フランチャイズ方式においては、0%~3%程度のロイヤリティに設定するケースが多いです。業務委託方式においてはロイヤリティは設定しないケースが多いですが、社員の給与計算といったバックオフィス業務を本部が代行する場合等には、売上高に応じた本部業務代行費を徴収するケースもあります。
(11)業務委託費
業務委託方式における業務委託費(独立者の取り分)は売上の30%程度の変動制にするケースや、固定の業務委託費を設定した上で売上や利益に応じてインセンティブ(変動制)を支払うケース等があります。
今回のコンサル日記はかなり長文になってしまいました。。。m(_ _)m
ご参考になりましたでしょうか?
社員独立制度やフランチャイズ本部構築等に関してご質問がある方は、お気軽に無料経営相談をご利用下さいませ!
本日も最後までお読み頂きありがとうございました。