コロナ禍でも過去最高売上&利益! ケンタッキーフライドチキンの 「2層マーケティング」と「DX戦略」
皆さんこんにちは、飲食店コンサルティング会社 株式会社ス リーウェルマネジメント代表コンサルタントの三ツ井創太郎です。
長引くコロナ禍で多大な影響をうける飲食業界。そんな中 でも好調な飲食企業様の取り組みを分析していきたいと思います。
今回取り上げさせて頂くのは「ケンタッキーフライドチキン」です。皆さんはコロナ禍においてケンタッキーフライドチキンの業績が絶好調である事はご存知でしょうか?
まず初めに同社の2020年4月~2021年3月の業績を見ていきましょう。
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コロナ禍におけるケンタッキーフライドチキンの売上推移
出所:決算情報などをもとに筆者作成
同社の売上を見ていくと改めてその好調ぶりが分かります。2020年4月~2021年3月の通期で見るとグループ全店(直営、 FC店合計)で売上高1,439億円(前年対比111.8%)と過去最高でした。コロナ禍においても前年超えしているチェーン店は他にもありますが、その多くが新店舗の出店によって売上増を実現しているケースが多いのですが、同社の凄い所は新店舗を含まない既存店(13ヶ月以上営業している 店舗)ベースでも見ても前年対比が113.6%となっている点です。
さらに付け加えるならば、コロナ禍の他の好調企業の傾向としては客数 自体は減少しているものの、家族等でのデリバリー需要増加により客単価 アップで売上好調を実現しているチェーン店が多い中で、同社に至っては 客数前年対比104.1%、客単価前年対比109.1%と「新店舗含む全店」「既存店のみ」「客数」「客単価」すべての指標において前年超えという実績を叩き出している事も驚くべき点です。
一方で利益面はどうか見ていきます。先ほどお伝えした1,439億円という売上高にはFC店舗の売上高も含まれているため、日本KFCホール ディングス株式会社の2021年3月期の連結業績を確認すると売上高896 億円(前年対比112.5%)、営業利益63億円(前年対比132.7%)、純利益に至っては28億円と株式上場後、過去最高であり利益面においても 絶好調である事が分かります。その他財務指標においても、自己資本比率こそ55.3%と対前年▲2.1%ではあったものの、自己資本利益率、総資産純利益率、1株当たり純資産、1株当たり当期純利益、期末日株価終値、 時価総額と主要財務指標の大半において前年を超える実績となっています。
コロナ禍で圧倒的な強さを発揮したケンタッキーフライドチキン。その強さの秘密について細かく見ていきます。
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コロナ禍におけるケンタッキーの戦略とは?
①デリバリー&商品戦略
まず始めに重要なポイントはデリバリーの強化です。2019年度にはデ リバリー実施店舗が220店舗であった同社ですが、2020年には376店舗(対前年170%)、さらに2023年までには553店舗と対2019年比 で2.5倍までデリバリー実施店舗を増やす計画を発表しています。
さらに商品戦略を見ていきます。同社では創業以来の看板商品である 「オリジナルチキン」に関して、コロナ禍のファミリー客の巣ごもり需要に対応するべく、2020年4月にはサイドメニューが選べてお得感のある「シェアBOX」、2020年7月には3種類のディップソースが付いた 「ディップバーレル」等のブラッシュアップ商品を数量限定でリリースし、 コロナ禍のファミリー需要を大きく獲得する事に成功しました。
シェアBOXが好調(出所:リリース)
ディップバーレルでファミリー層の支持を得た(出所:リリース)
なおご存知の方も多いかもしれませんが、ケンタッキーが使用している 鶏肉は全て国産原材料です。多くのチェーン店が外国産食材に頼る中で 「100%国内産」というのは同社の大きな強みになっています。さらに看板商品の「オリジナルチキン」に関しては、店内で20工程を経て手作りで仕上げています。こうした安心・安全を全面に打ち出した商品戦略が、改めてファミリー層から大きな支持を得て、コロナ禍における同社の業績好調に寄与しました。
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②マーケティング改革
ケンタッキーフライドチキンの好調要因を語る上で欠かせないのが、同社のマーケティング戦略です。今でこそ絶好調の同社ですが、2017年から売上高が9カ月連続で前年割れという厳しい時期もありました。こうした中で同社のCMO(チーフマーケティングオフィサー)の中嶋祐子氏が 中心となってマーケティング改革を行います。
元々ケンタッキーフライドチキンはパーティーやクリスマスといった 「特別な日」の高単価の利用客は多いものの、普段使いの利用客が少ない 点が課題でした。こうした中で500円価格帯の安いメニューで「新規客 層(1層)」を獲得し、季節限定メニュー等で「リピート&ファン客層 (2層)」を獲得していくという「2層マーケティング戦略」を実行しま す。この戦略が功を奏し、同社は長引く営業不振からV字回復する事ができました。
この2層マーケティングはコロナ禍においてもその効果を発揮します。
実際に筆者も店舗を訪れてみました。
筆者が訪れた店舗
お昼過ぎに店舗に行きましたが、店内は満席、外にも5名位がオーダー 待ちをしている状態でした。
店内のオーダーカウンターでまず最初に目についたのが、2階層マーケ ティング戦略の1つで新規客獲得効果を発揮している「ランチメニュー」です。
KFCのランチメニュー(出所:KFC公式Webサイト)
ケンタッキーのランチセットメニューには2つの大きな特徴があります、 一つめは最下限価格500円スタートという値段の安さです。そしてもう1 点はランチメニューの提供時間です。ケンタッキーフライドチキンは毎日 10時~16時にランチメニューを提供しています。例えば、マクドナルドのバリューランチは平日10時30分~14時までとなっており、お得なラ ンチメニューの提供時間が長いのがケンタッキーフライドチキンの特徴で す。
このように500円という低価格帯ランチを毎日、長い時間販売する事で新規客層(1階層)獲得の最大化を目指しているのです。
さらに実際に店舗のカウンター上のランチメニューを良く見てみると、ランチメニューの下部にはリピート&ファン客層(2階層)に向けた期間 限定メニュー「ダブルチキンフィレサンドセット」がしっかりと打ち出されています。
コロナ禍においては、巣ごもり需要が増える中で、同社が力を入れてい るデリバリーで初めてケンタッキーフライドチキンを利用して、その後実店舗に訪問するといったリピート客獲得の流れも増加しています。
コロナ禍でもその効果を発揮した「2階層マーケティング戦略」ですが、 同社の強さは他にもありました。
次は同社のDX戦略についても見ていきます。
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③ケンタッキーのフライドチキンのDX戦略
同社では近年DX推進に力を入れています。本部業務等のIT化もさるこ とながら、店舗のマーケティングにおいてもDX推進・システム企画開発 委員会を立ち上げ積極的にデジタルマーケティングを取り入れています。
ケンタッキーフライドチキンが力を入れているデジタルマーケティング の一つに「Googleマイビジネス」があります。
Googleマイビジネスとは、皆さんがグーグルで地名×飲食店等を検索 した際に検索ページの1ページ目のグーグルマップ上に店舗等が表示され るグーグルのサービスです。
Googleマイビジネスの最大の特徴は店舗側やユーザー側の様々な要素 =アルゴリズムを加味した上で、ユーザーにとって最適な店舗情報が表示 される点にあります。以前の飲食店のマーケティング手法としては企業側 から一方的に情報発信を行うマスマーケティングが主流でしたが、 Googleマイビジネスはユーザー個人の特性やニーズを踏まえたパーソナ ライズドマーケティングのロジックを取り入れています。
グーグル社はGoogleマイビジネスの各アルゴリズムの影響度合い等に関して公表をしていませんが、影響度合いが高い要素の一つに「ユーザーの位置情報」が挙げられます。
この「ユーザーの位置情報」というマーケティング要素はコロナ禍においてより重要性が増しました。コロナ禍に伴う在宅ワークや巣ごもり需要で、ユーザー側は遠方の飲食店等を検索するケースが少なくなり「自宅近く」等、自分の現在地からの距離を主軸とした検索を行うケースが多くなりました。
こうなるとスマートフォンの位置情報を補足した上で、ユーザーが求め るキーワード(業態、料理名等)にマッチする店舗情報(パーソナライズ された店舗情報)を表示するGoogleマイビジネスが非常に有利になります。
ケンタッキーフライドチキンはこのGoogleマイビジネスに対しても、戦略的に取り組んでいます。
その一例をご紹介します。皆さんのスマートフォンのgoogleの検索窓で 「ケンタッキーフライドチキン」と検索してみて下さい。近くに店舗があ ればグーグルマップ上にケンタッキーフライドチキンの店舗が表示されて いるはずです。(またはマップボタンを押す)
次に、Googleマイビジネスでマップ上に表示されたケンタッキーフライドチキンの1店舗をクリックしてみて下さい。Googleマイビジネスの店舗 詳細ページになると思います。そこから下にスクロールしていくと「この ビジネスからの最新情報」という項目になり、ケンタッキーフライドチキンのキャンペーン情報等が表示されていると思います。
実はGoogleマイビジネスでは、こうした情報発信がとても重要になりま す。細かいアルゴリズムについては、かなりマニアックな話になってしま いますのでここでは割愛しますが、端的に言うと定期的に最新情報を発信している店舗の閲覧数が増える傾向がありま同社では約1週間に1回程度、全店で一斉にこうしたコンテンツを配信し続ける事で、店舗近隣商圏内の ユーザーに対して来店動機をPRし続けているのです。
当社でも日々のコンサルティングの中で数多くの飲食店のGoogleマイビ ジネス活用戦略のお手伝いをしておりますが、ここまでGoogleマイビジネ スを徹底活用できているブランドはまだまだ少ないのが実情です。そうした意味ではケンタッキーフライドチキンは商圏内のデジタルマーケティングにおいてもかなり優位に立てていると言えます。
ただ一つ言えるのは、例え情報発信力が優れていても、商品力が低ければ継続的なお客様の支持を得る事はできません。逆に商品力が低い企業が、 マーケティングを強める事は「不満足の宣伝」をしているのと一緒なのです。
創業からの手作り製法を守りながらも、ブラッシュアップを続けている 唯一無二の看板商品「オリジナルチキン」、コロナ禍でも効果を発揮した 「2階層マーケティング戦略」、ユーザー特性を加味した「DXマーケティ ング戦略」。コロナ禍という未曽有の経済状況の中でも好業績を達成している企業には、しっかりと理由があるのです。
最後まで記事をお読み頂きありがとうございます。
本記事が少しでも皆様のご参考になれば幸いです。