飲食店が「働き方改革」を実現する為の「スキルマップ」の作り方と活用法|飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント
飲食店が働き方改革を実現する為に具体的にやるべき事に関して「良く分からない」というご相談を多数いただきます。
今回は飲食店の働き方改革の内容や法改正のポイント、具体的に取り組むべき事などをわかりやすくお伝えさえて頂きます。
(執筆:飲食店コンサルティング会社 代表コンサルタント三ツ井創太郎)
<この記事の目次>
Ⅰ.働き方改革関連法案の3つのポイントとは?
Ⅱ.飲食店が働き方改革を進める上で重要な視点
Ⅲ.飲食店の生産性向上の4原則
Ⅳ.飲食店の働き方改革のまとめ
Ⅰ.働き方改革関連法案の3つのポイントとは?
まずは「働き方改革関連法案」に関して分かりやすく説明していきます。「働き方改革関連法案」とは2019年4月1日より施工されており、下記8つの労働関連の法律の改正を行う為の通称となります。
1.労働基準法
2.労働安全衛生法
3.労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
4.じん肺法
5.雇用対策法
6.労働契約法
7.短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
8.労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
※中小企業への適応に関しては2020年4月以降
これら8つの法律全てを把握するのは大変だと思いますので、飲食店に大きく関わる3つのポイントを解説していきます。
(1)時間外労働の上限規制
今までは時間外労働に関しては、36協定の特別条項により実質的に上限なく残業をさせるケースがありました。
今回の法改正では特別条項を締結したとしても「年間720時間」という上限規制が設けられました。
さらに「年間720時間」以内であれば全てOKかと言うとそうでは無く、細かい条件が設定されています。
そして一番大きなポイントは今回の法改正では罰則規定が設けられ、違反した使用者に対しては6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
(2)有給休暇の消化義務
会社側は10日以上の年次有給休暇がある人に関しては、必ず5日以上は年次有給休暇を取得させなければならないという事です。
(3)同一労働同一賃金の推進
正社員、パート・アルバイト、派遣社員、契約社員など雇用形態が違ったとしても賃金や休暇、福利厚生などを同じ待遇にしなければならないという事です。
これ以外にも「高度プロフェッショナル制度」「衛生管理の強化」などの要件があります。
Ⅱ.飲食店が働き方改革を進める上で重要な視点
罰則規定も設けられた今回の働き方改革関連法案。2020年4月の中小企業への適応が直前に迫り、どの飲食店にとっても「待った無し」の対応が求められています。では飲食店で働き方改革を進める為には具体的にどのような事を行うべきなのか?
まず飲食店の働き方改革を実現させる為に2つの視点が重要となります。それは「省人化」と「生産性向上」です。
「省人化」とは、人をあまり必要としない業態への業態変更や人員を削減する為のIT導入等を行う対策です。ただこれらの対策は設備投資がかかる為、どちらかと言うと大手企業の戦略と言えるかもしれません。
実際に上場外食企業のIRを確認すると省人化に向けた戦略が多く掲げられていますのでぜひ一度確認して頂くのも良いと思います。外食産業では特に、スシロー、ロイヤルホールディングス、マクドナルドなどが働き方改革に向けてIT投資を加速させている事がIR資料等から読み取れます。
一方で「生産性向上」に関しては、正に中小企業が取り組むべき働き方改革戦略と言えます。
今までの飲食店は実際のところ社員の長時間労働に支えられてきた部分がある点は否定できません。
しかし、今後は今まで「当たり前だった」「なんとなく行っていた」業務にメスを入れ、ムダを省き、日々の業務をより生産性の高いものにしていく必要があります。
Ⅲ.飲食店の生産性向上に向けた4つのステップ
では飲食店において生産性を高めていく為には具体的に何をしたら良いのか。
ここでは飲食店の生産性向上に向けた4つのステップに関してお話をさせて頂きます。
ステップ1:やるべき事を明確化する
『まずはお店が望むQSCレベルを明確化=明文化する』
ホール、キッチンそれぞれの仕事を分解した上で明文化していきます。私はこれを「スキルマップ」と呼んでいます。
ホールのスキルマップを作成する際には一般的には基本姿勢の他にお客様が入店されてから退店するまでの流れにそって「あるべき姿」を定めていきます。
一方でキッチンに関してはポジション別のスキルマップが良いかと思います。その理由として私が多くの飲食店を調査したデータによると、店舗の中では特にキッチン社員の労働時間が長い事が分かりました。
その理由はキッチン内にはある一部の社員にしかできない仕事(社員にしかやらせていない仕事)が多く存在するからです。しかしながらその仕事は本当にその社員にしかできないでしょうか?私も飲食店の現場に入ると良く
焼肉店「肉のカットは特定の社員にしかやらせない」
居酒屋「刺身場は特定の社員にしかやらせない」
「レジ閉めはホール社員にしかやらせない」
などなど、社員限定の仕事を多く目にします。
社員の残業時間を減らしていく事が企業命題となった今、こうした社員にしかできないと思っている仕事(聖域)も細分化した上でアルバイトさんに担っていってもらう必要があります。
その為にはまずキッチンの仕事をポジション別に分けていく必要があります。
その上で各ポジションのA:レシピ把握 B:オーダー調理 C:仕込み D:閉め作業 E:発注 F:衛生管理という5つの業務に関しての習得度をチェックしていきます。
ステップ2:できるスタッフのノウハウをお店の資産にする
『全スタッフに関して何ができて、何ができていないのかを見える化させる』
ステップ1で作成したスキルマップを活用して、各スタッフの能力の見える化=スキルチェックをしていきます。このスキルチェックを行う事で
「全店の中でも〇〇さんの総合点数が高い」
「ご案内は〇〇さんがレベルが高い」
など今まで分からなかった各店の個人スキルが分かるようになります。
そして優れたスキルを持つスタッフに関しては、実際にどんな方法で業務を行っているのかをヒアリングする事で今まで個人に埋もれていた能力(これを暗黙知と言います)を、会社の資産として活用できるようになるのです。
「人が辞めるとお店のQSCレベルが著しく低下する」というお店はスタッフの能力が暗黙知化していて、お店の資産として活用できていない事が一番の原因なのです。
ステップ3:店長とスタッフのコミュニケーションを増やす
『フィードバック+日々の教育を行っていく』
ステップ2のスキルチェックで各スタッフの能力が明らかになったら、次は本人と面談を行いフィードバックを行います。
スキルチェックで本人が何ができて、何ができないかが明確化されていますので、フィードバックの中では「いつまでに」「なんの仕事を」「どれ位できるようにするか」を決めていきます。
スタッフのスキルアップを行う上ではこうしたフィードバックがとても重要です。
そして日々スキルマップシートを活用しながら店長(料理長)と各スタッフがコミュニケーションを行っていく事で初めて個人の成長を促進する事ができるのです。
当然ですが個人の成長無くして店舗や会社全体の生産性の向上はあり得ません。
ステップ4:適正な人員配置を行う
『モデルシフトと連動したワークスケジュールの構築』
ステップ1~3で個人スキルの把握と個人スキルアップに向けた教育が行えたとしても、無駄に人員を配置していては余分な人件費がかかってしまいます。
そこで重要になってくるのが「適切な人員配置」です。具体的には日々の売上予算に連動したモ「デルシフトの構築」とモデルシフトを順守した「ワークスケジュール管理」が肝となります。そして各個人のスキルマップがあれば、個々の能力を踏まえた上での人員配置も可能になります。ここに関してはまた別の機会に詳しくお話しをさせて頂きます。
Ⅳ.飲食店の働き方改革のまとめ
罰則規定も設けられた今回の働き方改革関連法案。中小企業でも待った無しの対応が求めらえています。
社員の労働時間を短縮し、休日取得を進める為にはアルバイトスタッフの効率的な活用が欠かせません。
働き方改革による社員の待遇改善には現実的にはコストも伴います。こうした中でアルバイトスタッフの実働時間をやみくもに増やしてしまっては人件費の大幅な増加による利益減少を招く事になります。
そうならない為にも、生産性向上に向けて業務の棚卸を行った上で、あるべき姿を明確化し、スキルマップを作成した上で、個人のスキルを見える化させ、足りないスキルの教育を絶えず行っていく組織文化の構築が急務となっています。
当社では飲食店の働き方改革実現に向けたスキルマップ作成やスキルマップと連動した評価制度の構築等に関するご相談を無料で承っています。無料経営相談をご希望の方は下部の「無料メール相談」ボタンよりお気軽にご相談下さいませ。
今回ご紹介した「スキルマップ」は下記より無料でダウンロードして頂けますので、ぜひご活用下さい。
本日も最後までお読み頂きありがとうございました。
皆様のご参考になれば幸いです。